第二章 『ソウ』って誰ですか?

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(……行灯?……本物なん?コレ……) 中にあるのは油皿と灯心で、電球のようなものは無いようだ。 周りにも電気コードみたいなものは無い。 ……珍しいものがあるものだ。 ここの家の人は、『骨董品コレクター』なのだろうか? 視線をそのまま上へと移し、天井もふと見てみる。 「……」 ここにも本来であれば、あるべき物が……やはり、……無い。 思わず眉を(ひそ)める。 (……『骨董品コレクター』なんは個人の趣味の範疇(はんちゅう)やけど、いくらなんでもやり過ぎなんちゃう……?) 何だか気になり身体を起こして部屋全体を見渡そうとすると、全身に痛みが走った。 どうやら頭痛が酷かったせいで今までは気が付かなかったが、私の背中には打身(ウチミ)のような痛みがあり、身体中に擦り傷もあるようだ。 (……うぅ……、地味に痛い……) 何とか身体を起こし、周りを見渡してみる。 四方を障子と襖に囲まれた部屋。 ……壁が存在しない。 ――――ということは……。 目を閉じて疑問に思ったことを脳内でまとめてみる。 この部屋には、天井に普通は付いている筈のシーリングライトも、壁にある筈のコンセントの差込口もないのだ。 明かりになりそうなものは、……行灯、のみ。 つまり――――。 電気を使用しなければ動かないモノが何一つとして存在していない、のだ……。 ……これは、一体、何を意味してるのか? (いくら『お宝コレクター』やったとしても、余りにも徹底し過ぎなんちゃううん……?……てゆーか『お宝コレクター』の方って実際に使用するモンなん?) この部屋だけの現象に思えなかった私は、何だか急に不安になり自分で自分の身体を抱き締めたのだった……。 # 暫くそのままの状態で居た私だったが――――。 ふと目を開けると、先程まで握り締めていた黒いきものが視界を捉えた。 もう一度、手に取ってみる。 一見、真っ黒なきものだが、ところどころ()みのようなものが付いていて一部変色している。 (……滲み……) これは、一体、何の滲みなんだろう? これは、一体、誰のきものなんだろうか? 何故、私はこのきものを握り締めていたのだろうか……? 思い出そうとしても、ズキッズキッ!と、頭痛が復活してくるだけで何も思い出せそうにもない。 まるで、何かが抵抗しているかのようだ。 記憶が曖昧なのは嫌だけれど、こう頭痛が酷ければ仕方無い。 (さっきの蒼のソックリさんに話を聞いたら、何か分かるかもしれへんし……) 私は自力で思いだすのを半ば諦め、ふぅと溜息を()いた。 すると……。 何か良い匂いが(ふすま)の方からしてきた。 (なんかお腹減ってきたかも……) そんなことを考えていたら、襖が音も立てず、すっと開いた。
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