第二章 『ソウ』って誰ですか?

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「……いや、だから!女性の身体に断りもなく触れたのは僕なんですから、僕の方が悪いんですよ?!」 ソックリさんも引き下がらない。 「そないなこと、ありませんっ!貴方は、ただ親切心からしてくれはったことやないですか……。それを私は嫌がるような態度を取ってしまって……。 自分でも何でか分からへんのですけど……でも、ほんまに貴方のことを嫌がったり恐がった訳やありませんから!」 お互いに自分が悪い、と押し問答になる。 「……本当にすみませんでしたっ!」 「……ほんまにすいませんでしたっ!」 同時にガバッと頭を下げて謝った。 「……」 「……」 そろそろと目線だけ上げていく。 目が合い、見つめ合う。 お互いに様子を窺う……が、まるでにらめっこをしているようだ。 この状況が何だか可笑しくなり、次第に口角が上がっていく。 「……ふっ。……はははっ!」 「……ぷっ。……あははっ!」 思わず同時に吹き出した。 ――――久し振りに笑った……気がする……。 色々と感じていた不安と緊張が少しだけ和らいだ気がした。 # ひとしきり笑った後――――。 「大丈夫そうですね。せっかくのお粥が冷めてしまいますので、布団から出てきて召し上がって下さい。もし駄目なようでしたら直ぐに手を貸しますから……」 ソックリさんは微笑んで言った。 笑い過ぎたのかお腹と、こちらは何故かは分からないが背中が痛かったが、何とか身体を動かして箱膳の前に座る。 箱膳には、お粥と梅干し、白っぽい飲み物と思われる液体のもの、それとお白湯が置いてあった。 「三日三晩も食べれなかったんですから、お粥は三分粥にしました。消化の良いものの方が良いでしょうから。……本当は、おもゆにしようかとも思ったんですけど、それじゃ、流石(さすが)にお腹が満たされないかと思いまして」 「重ね重ね、お気遣いありがとうございます……」 御飯まで御馳走になり本当に申し訳無い……。 好意を無駄にせず、冷めない内に有り難く戴こう……。 「いただきます」 掌を合わせて言った。 お粥を一口、口へ持っていく。 「……美味しい……。美味しいです!!」 お粥は三分粥というだけあって、水分が殆どだったが、とても美味しかった。 梅干しも絶妙な塩加減だ。 三日三晩、何も食べて無かった身体に、しみ渡っていくのを感じる。
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