1036人が本棚に入れています
本棚に追加
「……いや、だから!女性の身体に断りもなく触れたのは僕なんですから、僕の方が悪いんですよ?!」
ソックリさんも引き下がらない。
「そないなこと、ありませんっ!貴方は、ただ親切心からしてくれはったことやないですか……。それを私は嫌がるような態度を取ってしまって……。
自分でも何でか分からへんのですけど……でも、ほんまに貴方のことを嫌がったり恐がった訳やありませんから!」
お互いに自分が悪い、と押し問答になる。
「……本当にすみませんでしたっ!」
「……ほんまにすいませんでしたっ!」
同時にガバッと頭を下げて謝った。
「……」
「……」
そろそろと目線だけ上げていく。
目が合い、見つめ合う。
お互いに様子を窺う……が、まるでにらめっこをしているようだ。
この状況が何だか可笑しくなり、次第に口角が上がっていく。
「……ふっ。……はははっ!」
「……ぷっ。……あははっ!」
思わず同時に吹き出した。
――――久し振りに笑った……気がする……。
色々と感じていた不安と緊張が少しだけ和らいだ気がした。
#
ひとしきり笑った後――――。
「大丈夫そうですね。せっかくのお粥が冷めてしまいますので、布団から出てきて召し上がって下さい。もし駄目なようでしたら直ぐに手を貸しますから……」
ソックリさんは微笑んで言った。
笑い過ぎたのかお腹と、こちらは何故かは分からないが背中が痛かったが、何とか身体を動かして箱膳の前に座る。
箱膳には、お粥と梅干し、白っぽい飲み物と思われる液体のもの、それとお白湯が置いてあった。
「三日三晩も食べれなかったんですから、お粥は三分粥にしました。消化の良いものの方が良いでしょうから。……本当は、おもゆにしようかとも思ったんですけど、それじゃ、流石にお腹が満たされないかと思いまして」
「重ね重ね、お気遣いありがとうございます……」
御飯まで御馳走になり本当に申し訳無い……。
好意を無駄にせず、冷めない内に有り難く戴こう……。
「いただきます」
掌を合わせて言った。
お粥を一口、口へ持っていく。
「……美味しい……。美味しいです!!」
お粥は三分粥というだけあって、水分が殆どだったが、とても美味しかった。
梅干しも絶妙な塩加減だ。
三日三晩、何も食べて無かった身体に、しみ渡っていくのを感じる。
最初のコメントを投稿しよう!