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「……それでだね。君の名前は何て言うのかな?」
強面の顔ながら、話し出すととても人懐っこい笑みと靨を浮かべ、髷を結っている人は私に尋ねてきた。
顔は全く似ていないが、何となく雰囲気が暖かく柔らかで、蒼や『ソウジ』と呼ばれたソックリさんのそれとどことなく似ている。
(……それにしても、この顔、何処かで見たことがあるんやけど……。何処で見たん?)
「………月……です……」
そんなことを考えながら返事をしたので、何だか歯切れの悪い気の無い返事になってしまった。
「……お月殿、とやら……もしかして私とは話したく無いのかな?」
何だか悲しそうな表情で髷を結っている人は言う。
「……えっ?!あっ!すいませんっ!」
慌てて謝りフォローする。
「……いえ。そちらの方となんか似てはるなぁ……と思いまして。……お二人はご兄弟や何か……」
ソックリさんの方を見ながら答えた。
まさか、『貴方のお顔を知っているような気がして……』とは言えず誤魔化した訳だが。
「私とソウジがか?……似てるとは、到底思わないが……」
髷の人は胸の前で両手を組み、腑に落ちないのか首を捻りながら答える。
「お顔が……とかやなくて……その……全体的な雰囲気やないかと思います……」
……そう、この二人は似ている。
咄嗟に誤魔化す為に言った言葉だが、嘘はついていない。
そう感じたのは事実だ。
すると、髷を結った人は凄くうれしそうに破顔した。
「なんかそう言われると嬉しいなぁ。なぁ、ソウジ」
と言って、うんうんと頷き、ソウジと呼んだソックリさんの方を見る。
ソックリさんは、
「そ、そんな!先生と私が『似ている』なんて滅相も無いですよ!」
と、 両手を顔の前でブンブンと振った。
まるで『恐れ多い』と言わんばかりの慌てぶりだ。
下を向いて真っ赤になっている。
(……もしかして、照れてはるん?)
先程までの大人っぽい対応とは打って変わったソックリさんの対応に正直驚いた。
髷を結った人は、そんなソックリさんの慌てぶりにはお構い無しに話を続ける。
「私とソウジはね、血の繋がりは無いが、家族みたいなものなんだよ。もし事情を全く知らないお月殿が似ているというのであれば、それはやはり似ているのだなと思う」
と言って、髷の人は目を細めとても温かい目でソックリさんを見詰めた。
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