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まるで、お兄さんが年の離れた弟を見るような目だ。そこには、慈愛の情が詰まっているような気がした。
「私達はね、ソウジが九歳の頃から、江戸にある道場で一緒に暮らしていたんだ。だから、お月殿が『兄弟』と表現したのは、強ち間違いではないな」
懐かしむように優しい目をして髷の人は言った。
臆測にしか過ぎないが、この人はソックリさんを実の弟のように可愛がっているのではないだろうか。だから、暖かく柔らかい雰囲気が似ているのだ。
そんな気がした。
少し話が反れてしまったが……、と髷の人は続ける。
「私は近藤勇と言う。君の世話をしていたのは……」
そう言って、近藤さんはソックリさんの方を見た。
「私もまだ名乗っていませんでしたね。私は沖田総司です」
『コンドウ イサミ』
『オキタ ソウジ』
……いくら日本史音痴の私でも、この名前くらいは知っている。
幕末に活躍した新選組の局長と、一番隊の組長の名前だ。
歴史上、有名な人物を思わぬ形で目にし驚きが顔に出そうになった。
慌ててポーカーフェイスを装う。
ここは知らないフリをした方が得策のような気がする。
――――それにしても。
先程から気に掛かっていたことには納得した。
近藤さんの顔は中学の歴史資料集の中で見たことがあったのだ。
『幕末』の新選組のことが記載されているところに、近藤さんの写真が掲載されていた。
ただ、写真で見た時は髷ではなくオールバックみたいな髪型だったような気がするが……。
沖田さんのようにポニーテール型にしていたら、真正面から見たら、前髪も上げている近藤さんはポニーテールもオールバックに見えそうだ。
それに、心なしか今の近藤さんの方が若い気がする。
(もしかしたら、写真を撮った時期が違うのかもしれへん)
などと、写真と今の近藤さんの差異を考えていると。
「ところで、お月殿。君はあんな時刻に、一体、一人で何をしていたのかな?」
と、近藤さんは私に訊ねた。
き……、きた。
遂に、この質問が。
「……そ……それが……」
「ん?」
「……信じてもらえるか分からへんのですけど……記憶がさっぱり無くて……。私は一体どこで何をしていたのでしょう……か……」
眉間に皺を寄せ俯きながら答えた。
質問に質問で返してしまったが仕方無い。
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