第三章 「……ここは何処?私は……月です……」

4/11
前へ
/377ページ
次へ
半分本当で、半分嘘だ。 何がどうなって私がこの時代に居るのか――――。 私には全く記憶に無い。 そして、私がこの時代に来て何処(ドコ)で何をしていたのかも分からない。 私の記憶があるのは、先斗町で蒼と別れた後、高瀬川を見に木屋町通へ向かったところまでだ。 その後、気付いたら此処(ココ)で寝ていた。 分かるのは、それだけだ。 近藤さんも、沖田さんも目を見開いた。 そして、動揺の入り混じった声で同時に訊ねる。 「そ……それは、本当かね?」 「それは……本当……なのですか?」 「……はい……」 「…………」 「…………」 …………沈黙が訪れた。 沈黙に耐えられなくなった私は彼等(カレラ)に 「……すいません……」 と謝った。 そして、今の私の現状を彼らに伝えることにする。 「……なんでか分からへんのですけど、思い出そうとすればする程、頭が痛くなるんです……」 すると、沖田さんはその光景に覚えがあったのか、 「あぁ、そう言えば……」 と相槌(アイヅチ)を打った。 多分、食事を持ってきてくれる前に見た光景を思い出したのであろう。 近藤さんは、そんな私達を見て胸の前で腕を組みながら、こう言った。 「………お月殿……。貴女が此処(ココ)――此処は壬生寺の側なのだが――此処に居る経緯をお話ししよう。これは私が見たことと、総司から聞いた話になる訳だが……」 近藤さんの話は、こういうことだった。 沖田さんは何でもその日、用事があったらしく、寅の刻辺りに壬生(ミブ)へ帰って来たそうだ。 ……私をおんぶして。 帰って直ぐに――それも未明だった訳だが――私を連れて帰ってきたことを、まずは近藤さんに相談した。 その時、沖田さんは木屋町近辺から壬生へと戻ってくる途中で『私を拾った』としか説明しなかったらしい。 私はと言えば、それはそれは酷い高熱で、一体あんな夜更けに何をしていたか尋ねる場合では無かった、という。 高熱もあり意識の無い者を外に放っておく訳にもいかない。 熱が下がれば意識も取り戻し、話も聞けるであろう……ということで、三日三晩、沖田さんが面倒を見てくれたという訳だ。 「……お月殿。ここ数日の記憶が曖昧なのは、高熱のせいかもしれぬ……な。なぁに。数日経てば、ふと思い出すかもしれぬぞ?では、今まで貴女は何処(ドコ)で何をして暮らしていたのかな?」
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1036人が本棚に入れています
本棚に追加