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沖田さんは、そんな近藤さんを見送った後、私を見て、
「……体調の方は大丈夫ですか」
と心配そうに尋ねた。
「……ほんまにすいません……。ご迷惑ばかりお掛けしてしまって……」
本当、沖田さんに頭が上がらない……。
申し訳無い気持ちで一杯になる。
すると。
「……貴女は、こんな時にまで……」
少し苦し気に沖田さんは何かを呟いた。
それはとても小さな声で――――。
「……えっ?」
聞き取れなかった私は思わず聞き返したが、沖田さんは直ぐに表情を変え、柔らかい笑顔になって言う。
「それでは、僕も行きますね。サンナンさん達を説得してきます。貴女はその格好のままだと、外に出るのを憚られるでしょうから、帯を締めて此処で待っていて下さい」
そう言われて、改めて気付いた。
自分の格好が浴衣に伊達締め姿だったことに――――。
「??!?!」
半分寝間着のような格好で、近藤さんや沖田さんの前で平気で話していたのかと思うと、急に恥ずかしくなり、慌てて、
「は、はいっ!」
と返事をした。
沖田さんは、そんな私を見て、くすくすと笑いながら立ち上がり襖を開ける。
そして、
「直ぐに戻りますね」
と言って、部屋から出て行った。
私は、沖田さんが出て行った襖を暫く見ていたが、
「身嗜み、早よう整えへんと……」
と独り言を言い、立ち上がる。
ズキッっズキッっ!!
背中や全身から痛みがズキズキと主張してきた。
(めっちゃ痛いんやけど……。何したんやろ……私)
安静にしている限り問題は無いが、動くとやはり背中とすり傷が痛んだ。
数日間は引きずりそうな怪我だな、と思いながらも身体を動かす。
――――沖田さんがいつ戻ってくるか分からないからだ。
既に彼には寝顔も寝起きの姿も見られてしまっていたが、出来れば戻ってくるまでに少し位はきちんとしておきたかった。
(……取り敢えず、顔、洗いたいんやけど……)
と、心の中で呟く。
洗いたいのだが、この時代に洗面所なんてそんな洒落た便利なものは無いだろう。
あるとしたら、多分、井戸だ。
しかし、井戸のある場所も分からないし、居候の身で勝手に出歩いて良いのかも分からない。
仕方が無いので、木桶の水と、先程まで私のおでこに乗っていた手拭いを使わせてもらい、顔を洗った。
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