第三章 「……ここは何処?私は……月です……」

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沖田さんは、そんな近藤さんを見送った後、私を見て、 「……体調の方は大丈夫ですか」 と心配そうに尋ねた。 「……ほんまにすいません……。ご迷惑ばかりお掛けしてしまって……」 本当、沖田さんに頭が上がらない……。 申し訳無い気持ちで一杯になる。 すると。 「……貴女は、こんな時にまで……」 少し苦し気に沖田さんは何かを呟いた。 それはとても小さな声で――――。 「……えっ?」 聞き取れなかった私は思わず聞き返したが、沖田さんは直ぐに表情を変え、柔らかい笑顔になって言う。 「それでは、僕も行きますね。サンナンさん達を説得してきます。貴女はその格好のままだと、外に出るのを(ハバカ)られるでしょうから、帯を締めて此処(ココ)で待っていて下さい」 そう言われて、改めて気付いた。 自分の格好が浴衣に伊達締め姿だったことに――――。 「??!?!」 半分寝間着のような格好で、近藤さんや沖田さんの前で平気で話していたのかと思うと、急に恥ずかしくなり、慌てて、 「は、はいっ!」 と返事をした。 沖田さんは、そんな私を見て、くすくすと笑いながら立ち上がり襖を開ける。 そして、 「直ぐに戻りますね」 と言って、部屋から出て行った。 私は、沖田さんが出て行った襖を暫く見ていたが、 「身嗜(ミダシナ)み、()よう整えへんと……」 と独り言を言い、立ち上がる。 ズキッっズキッっ!! 背中や全身から痛みがズキズキと主張してきた。 (めっちゃ痛いんやけど……。何したんやろ……私) 安静にしている限り問題は無いが、動くとやはり背中とすり傷が痛んだ。 数日間は引きずりそうな怪我だな、と思いながらも身体を動かす。 ――――沖田さんがいつ戻ってくるか分からないからだ。 既に彼には寝顔も寝起きの姿も見られてしまっていたが、出来れば戻ってくるまでに少し位はきちんとしておきたかった。 (……取り敢えず、顔、洗いたいんやけど……) と、心の中で呟く。 洗いたいのだが、この時代に洗面所なんてそんな洒落(シャレ)た便利なものは無いだろう。 あるとしたら、多分、井戸だ。 しかし、井戸のある場所も分からないし、居候の身で勝手に出歩いて良いのかも分からない。 仕方が無いので、木桶の水と、先程まで私のおでこに乗っていた手拭いを使わせてもらい、顔を洗った。
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