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そして、少し着崩れていた浴衣を着直し、綺麗に畳まれていた半幅帯を手にし再び文庫結びにした。
次は髪型だ。
江戸時代の髪型は、日本髪だ。
幕末であっても、それは変わらない。
もしかしたら、これが今、一番問題かもしれない……。
(……どないしよう……)
曲げた人差し指を唇に当てて考える。
昔、母が言っていたことを思い出したのだ。
――――確か、江戸時代の女性の髪型は色んな種類があり、身分や年齢、既婚・未婚などによっても違っていた、と。
しかも、地域によって流行が違ったらしい。
流行に関しては、現代でも服飾全般に地域性があるのは、普通のことだ。
ましてや、幕末。
現代とでは、情報の速度・流通量が違う。
当然、江戸と上方では流行っているものが違うだろう。
それは仕方無い、のだが……。
私が唯一知っている日本髪は『文金高島田』だ。
この髪型、現代では花嫁さんの髪型だ。
しかしながら、【幕末】ではどうなのだろう……。
あの髪型は誰が結うのか……。
武士の奥さん?町娘?それとも、芸者さん?
……さっぱり分からない。
しかも、あんな複雑なもの、当たり前だが、私が一人で結えるわけが無い。
『産まれ育った場所や身分が特定出来そうなもん、下手に結えるわけがないやないの!!しかも、複雑過ぎて構造がどないなってんのかも、よく分かんないしっ!』
下手に疑われる芽を自分から率先して蒔く必要はない。
――――かと言って、結わないのも変だ。
取り敢えず、前髪だけは上に上げて『ポンパドール』にしてはみたものの……。
どうしたら良いか分からなくなる。
『前門の虎 後門の狼』って、こんな気分なのだろうか……。
……日本髪、なんて。
(なんでそんなもん発達したんやぁぁぁっっ!!)
と、完全に八つ当たりとも思える――日本文化を研究している人達が聞いたら怒りそうな――台詞を私は心の中で叫んだ。
私が髪型をあれこれと悩んでいる内に、結構な時間が経っていたらしい。
襖の向こうから
「お月さん。沖田です。開けますね」
と、声が聞こえた。
「っえ?!……あ、ちょっ……」
返事をする間もなく、襖が開いた。
「…………」
沖田さんは私の姿を一瞥するなり、目を見開いて絶句する。
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