第三章 「……ここは何処?私は……月です……」

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畳、百五十畳って……。 (どんだけ広いん?!) 現代の家の概念から考えると、とんでもない広さだ。一体、何部屋あるのだろうか? (一部屋八畳として……約十八部屋?!LDKがあったとしても15LDK??!!大邸宅やん……) 開いた口が塞がらない、と言った感じでぽかーんとしていると、 「……まぁ、実際のところは、百四十六畳だったんですけどね」 と、その時の様子を思い出したのか、少し嬉々とした感じで沖田さんは話す。 「――――って。……え?!まさか、沖田さんが数えはったんですか?!」 誰が畳の数なんて数えたのかと思ったら、まさか沖田さんだったとは……。 人は見掛けによらないものだ。 一体何のために数えたのだろう? こう見えて、実は一風変わったヒトなのだろうか? 沖田さんを見る目が変わりそうだ。 「いいえ。実際に数えたのは僕ではありませんが……」 と言い、軽く握った左手の人差し指の関節を軽く口にあてて、くすくすと笑った。 相変わらず、暖かで柔らかい雰囲気を醸し出す微笑みだ。 蒼に似ているせいか、この微笑を見ていると理由も無く安心する。 拾われたのが沖田さんじゃなかったら、もっと不安に(サイナ)まれていたのではないか、と思う。 そんな思いを心の中で(ツクヅク)噛み締めていると、 「お月さんにも、後で彼等(カレラ)を紹介しますね」 と、沖田さんは更ににっこりと笑って言った。 そして、 「兎に角、広いので迷子にならないで下さいね」 と私が思っていたことを、まるで超能力者のように言い当て、釘をさしたのだった……。 ******――****** (シバラ)く進むと、突然、沖田さんの足が止まった。 先程とは打って変わって、真剣な表情をして私を振り返って見る。 「先生方が待っているのは、此処(ココ)を曲がったところにある部屋になります。僕が入ったら、お月さんは後ろに付いて入ってきて下さい」 と沖田さんは私に言い、皆さんがいらっしゃるという部屋の(フスマ)の前に座った。 私もそれに(ナラ)って彼の斜め後ろに座ったのを確認すると、 「沖田です。失礼します」 と言って、襖を開けた。
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