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「……ほんまにぃ?なんや態度がえらい微妙な感じなんやけど……?」
下から覗きこんで睨むようにして尋ねてみると、「本当にっ!」と少し慌てた感のある蒼の声が返ってきた。
(……それなら……まさかと思うけど、私に見とれてた、とか?――――いやいや、蒼に限って?そんなことあるわけないやんっ!!)
思わず、自分で自分にツッコんだ。
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花火を観ている間も、私の浴衣姿が気になるのか、蒼は花火じゃなく私の方にちらちらと視線を送ってきていた。
どこか気もそぞろのようだ。
(……そんなに浴衣姿が気に入ったんやろか……?)
珍しいこともあるものだ。
普段と違う蒼の一面が見えたような気がして、何だか嬉しくなる。
「――――何?花火、観ぃひんの?……私の顔に何か付いてるん?」
からかい半分、首を傾げて、隣で立っている蒼を見上げて聞いてみた。
「……みてるよ。……月、いくら何でも自意識過剰過ぎ。花火観にきて花火観ないなんて、あり得ないから」
素っ気ない、いつもの蒼の返事。
(……じゃあ、あの視線は何やったん?)
思わず、心の中でツッコむ。
相変わらずの蒼の態度に苦笑いしてしまった。
――――ド・ドンッ!ドンッ!!パラパラパラパラ……。
幾つもの色とりどりの大輪の華々が夜空に次々と咲き誇る。
「綺麗やなぁ……」
「うん」
今度は蒼もちゃんと花火を観ているようだ。
「――――あっ!私、あれ好きやねんっ!」
金平糖のような小さい光の粒をキラキラさせて光る花火を指差した。
「あの、キラキラしたの?」
「そうそう。何か星みたいちゃう?思わへん?」
「……星……ね……。……なんか月らしい……よ」
「そう?」
何が私らしいのかよく分からず聞き返すと、蒼は花火を観たまま「……うん。本当に……綺麗だ――――」と呟いた。
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宇治川花火大会は、宇治市で行われるのであるが、京都市内からそんなに遠く離れた場所というわけではない。
花火を見た後、私達は京阪の祇園四条駅まで戻ってきて、繁華街である先斗町で遅めの夕食を食べていた。
先斗町は、鴨川沿いにある。
夏になると、『川床』が有名だ。
料亭のような値段がお高めのところも勿論あるが、イタリアンだったり洋風のようなところも、ちらほらとあるので、時々、友達とご飯を食べに来たりする。
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