第一章 「ごめん」と言われても困ります……

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蒼の言葉をまとめると、こういうこと、だった。 『……嫌いになったわけじゃないんだ。……ただ……もう一緒には居られない……。ごめん……』 いくら聞いても、これ以上のことは何一つとして言わない。 「……そんなん、急に言われても……」 こんなこと突然言われて、納得出来るわけがない。 その事を伝えると、何故か蒼は涙を流しながら言った。 「……ごめん……」 と――――。 (……なんで?なんで蒼が泣くん?泣きたいのは私の方や……) 思わず蒼を責めてしまうような言葉が出てきそうになるが、喉まで出かかった言葉を呑み込む。 (……落ち着け、落ち着け、私。ここは落ちつかなあかん。蒼を責めたって仕方ないんやから。そんなことよりも――――) 膝の上に置いた手をぐっ!と握り締めた。 そう。 そんなことより、蒼が何故そんな結論に辿り着いたのか、聞かなくては……。 心の中で(落ち着け、落ち着け)と何度も復唱するが、落ち着くどころか、握り締めた手が震えているのが分かる。 何よりも理由が知りたい筈なのに、完全に気が動転してしまっていて上手く話せない。 それに……。 (……理由を知ったとして、私はそれを素直に受け入れられるん?) 自問自答してみるが、……答えは出ない。 (……蒼自身も言わへんのやないやろうか……) 何となく、そんな気がした。 目の前の蒼は俯いて泣いてしまってるし、私は手の震えが止まらない。 こんなにお互いが動揺している時に、話し合っても意味がない気がする。 このまま、ここでこの話をしていても、蒼はひたすら『……ごめん……』と言うだけだし、私は気が動転している分、そんな蒼を責めるような言葉を言ってしまいそうで……恐い。 【今、話し合ってはいけない】 ……これが、今、出すことが出来る、私の結論だった。 逃げなのかもしれないが、お互い落ち着く時間も必要だろう。 Bestではないかもしれないが、Betterと思われる方を私は選んだ。
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