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ξ゚⊿゚)ξ
人差し指ほどの小さなツンちゃんがコップ大の水槽の中を泳いでいる。
年季の入った体育館の裏側で、幼い頃の僕たちは膝を抱えて彼女を見ている。目をぎらぎらとさせる僕たちの姿は、煙草をふかす不良少年たちとなんら違いはない。当時の大人たちは俯瞰したようにそう言うはずだ。
真夏の熱気に参ったのか、隣のドクオが首にかけたタオルでしきりに汗を拭っていた。膝の上に乗ったくしゃくしゃの記録用紙は今や湿り気を帯びていて、筆記用具の類はなんの意味も持たなくなっていた。
('A`)「まるでアダルトビデオの鑑賞会みてえだ」と、ドクオがおどけて言ったのは、たしか等身大で幼馴染のツンちゃんがトイレに出て行ったときだったと思う。
当時中学生だった僕たち三人は、夏休みの自由研究としてツンちゃんの物性について研究していた。大人になった今に覚えば、それは中学生にはとうてい扱いきれない課題だったと分かるのだけれど、それと同時に「子供の時は神秘的なものに一つは触れておくべきだ」という先生の配慮もなんとなく理解できた。
とはいっても、年端もいかない少年少女に、性的な匂いを帯びた神秘性などというものは学校の保健体育の授業ほどになんの意味も持たない。
( ^ω^)「それはちょっと失礼だと思うお」などと言い返す僕も、内実は間近で見る少女の裸体に興味深々だったと思う。
そもそもの事の始まりは、クラスで育てていたミクロなツンちゃんが増えすぎて教室の水槽を破裂させたことだ。先生曰く、それは僕たちがツンちゃんの爆発的に増殖する性質を甘く見ていたから起こったらしい。実際にそうなのだけれど、僕たちには先生の話がツンちゃんの食ったら太る体質を暗喩しているように感じられ、僕は隣で必死に笑いをこらえるドクオと顔を真っ赤にさせるツンちゃんにどぎまぎしていて話どころではなかった。
学習指導ならぬ指導の後、僕たちは壁や廊下にまで広がったツンちゃんをかき集めてコップの中に押し込めた。目に見えるか見えないかの大きさのツンちゃんが集まって人差し指大の一つの存在になったのはその時なのだけれど、大きい方のツンちゃんの指示で先生にはそのことを知らせなかった。理由は分からない。
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