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それから、解放されたもの――小さなツンちゃんを少しのあいだ親子と同じように見つめた。ややあって、がさがさと背後の草むらから音がした。
やれやれ、と思わず声が出た。
(#´゚ω゚`)「――ツンちゃんだっ……捕まえろ!」
親子が驚いたように振り向いた。その瞬間、僕の座っていたベンチをなぎ倒して大勢の男たちが雪崩のように公園の中へ駆け込んできた。
その時の僕は男たちが来ることを知っていたから、コンビニの買い物袋を忘れずにその場からいそいそと立ち去ることが出来ていた。虫網やらタモ網やらを持ち出して、大の大人がなにを捕まえるのかと呆れる余裕さえあった。
間もなく母親のぎゃーっという悲鳴が聞こえて、子供がわんわんと喚く声がした。続いて大人たちの怒声が昼下がりの公園の静けさを掻き消して、遠くから声を聞きつけた野次馬と男たちの同類が走り寄ってくると、やがて公園の中で大きな泥団子が形成された。
(*;∀;)
(*。〇゚)
( ´゚ω゚`);`゚ω゚´)´゚ω゚`)
これじゃあもうなにがなんだか分かんないよなあ、と僕は呟いて、公園内の湖の湖面をすれすれに滑空するツンちゃんの無事を少しだけ祈る。なにかにかこつけてあの日から世界はおかしくなっただのと厭世的になるのはいささか僕の日常としては正しくない。
けれど、そんな僕も真面目にいろいろと考えなければいけない日が来たのかもしれない。
(*^ω^)
僕はスキップするように走る片手間、家にいるツンちゃんへメールを送った。今から無事に帰るよ、と短く。
返信がこないことは知っていた。ただそれは、同居するツンちゃんが僕のことをどうでもいいと思っているからではない。
確かに大きなツンちゃんは高校生になった頃からまったく喋らなくなったけれど、僕のことを心配してくれているのだ。
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