第7話

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       『彼女』はこの世界にはいない。 ( ^ω^)  僕が目を覚ましたときには全てが終わっていたようで、そもそもなにが終わってしまったのか今までなにをあれこれと考えていたのか僕は思い出せずにいた。ただ僕の胸の中はむかむかとしていて、厭なことを忘れようと飲酒したときに大切なことを代わりに忘れていしまったかのような後味の悪さを感じる。ただ今も鮮明に残っているのは、二日酔いに似た気怠さと申し訳程度の頭痛だ。 ( ^ω^)「長い、長い夢を見ていたみたいだお」白い病室、白いベッド、シーツ、尿瓶を手に微笑む看護師。デレちゃん。 ζ*゚ー゚)ζ「みんな口をそろえてそんなこと言うのよ。困ったものだわ」デレちゃんは親指で背後を指して、「けれど、みんなあたしのこと、すぐに受け入れたわ。あとはあなただけ」  僕はデレちゃんから覗き込むようにして廊下を見ると、デレちゃんたちが群れを成して歩いていた。あるデレちゃんは子持ちの看護師で、あるデレちゃんはナースステーションの影でひそかに淫行に及んでいた悪徳医師。これを平日昼間に放映された刑事ドラマに仕立て上げたのはデレちゃんであったけれど、主役を演じたデレちゃんへの風当たりはやはり強く、最近流行りの印象操作の賜物か、デレちゃんの所属する事務所とドラマの制作会社がよいしょよいしょとドミノ倒しに潰れてしまい、ついに放映は打ち切りとなってしまった。印象操作に使われたスキャンダルはドラマに対する皮肉かデレちゃんへの淫行とされているそうだけれど、デレちゃんのファンであるデレちゃんたちも憤りこそ覚えるものの、騒動を広げたその一派に加わっていることに気付いてはいない。  いいや、と僕はぶるぶると首を振って視線を落とした。 (; ω )  わけがわからない。
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