天使の鼓動side樹利 第2話

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「親父が愛人に買った部屋に住んでいたからさ。 既婚者の親父にマンションを買わせて、別れたあとものうのうとその部屋に住んで、対外的には『イイ子』ぶっている最悪な女だと思ってた」 カズは目を見開いたまま、それで?と身を乗り出した。 「女ってのは裏表が激しい生き物だって知ってたから、一生懸命前向きに明るく振る舞う可愛に、最初は苛立ってたよ。 だけど見れば見るほど、違和感を覚えたんだ。 誰も見てないところでもいつもがんばっていて、押し付けじゃない気遣いがあって、どんなに冷たい態度を取っても明るい笑顔を向けてくる可愛に……。 親父の愛人だったかもしれないけど、純粋な恋愛だったのかな?何か誤解があったのかもしれないな、なんてそんな風に思い始めて、それでもやっぱりどこか解せなくて、聞いたんだよ。 『どうして親父の愛人をしてたんだ?』って」 カズはゴクリと息を呑んで、こちらの言葉を待っていた。
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