第1話

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今日から私の高校生活が始まる。 執事の運転する車の中、支度を整える 茶色の髪を二つに縛り、お下げ髪の三つ編みに眼鏡。 まさに地味!!っと、言わんとばかりの髪型。 前で運転しているバカは必死に笑を堪えている。 「お嬢様…ッププ…よくお似合いで。」 明らかバカにしてるあいつに私は蹴りをいれてやった。 「おお、怖い怖い。」 奴は私の蹴りを見事に片手で止めやがる。 「ッチ…」 私は足を戻し、腕を組みながら窓の外を見ていた。 すると、綺麗な桜の木が目に留まる。 「ちょっと止まって。」 私は車を止め、桜の木のとこまで行った。 何故だかわからないけど桜の木が、私の心を引き寄せた様な気がした。 風で桜の花びらが舞う。 「綺麗…。」 その桜を見て 私は何故か涙が零れた。 私は涙を拭い 数分、桜を眺めていた。 すると向こうの方から誰かがやって来た。 思わず私は桜の木のかげに隠れた。 桜の木を眺めていたそいつは 何か独り言をしゃべっていた。 そいつも涙を流していた。 私は何を言っているのか盗み聞きしようとしたが、桜の木の根もとにつまずく。 ドサッ… 甘い香り 何かに受け止められる感触 私はそっと顔を上げた 目の前には、整った顔立ちをしている青い瞳の男がこちらを見下ろしていた。 男は驚いた顔で私を見ていた。 私は数秒その綺麗な顔を眺めていたが、ハッと我に返り 今の状況を見直す、 これって抱き合ってる状態だよね…。 私は恥ずかしくなり 体を引き離す。 顔が赤くなっているのが自分でもわかった。 その姿を見られぬように 私は男に頭を下げ車へと戻る。 風でその男の匂いが飛んでくる その匂いは何故だか懐かしかった。 私は車の中、窓の外にある桜をずっと眺めていた。 遠くなる男の姿と共に。
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