78人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「あれーそこどうしたんですか?」
女子社員に言われてハッとする。
見えてしまっていたのだ。今朝どうにかして見えないようにしたというのに。
何をとは言えない。このドが付くほど天然な彼女に察してくれとは言えなかった。
彼女はまだ首元を指している。言われるがままその場所を触ってみた。
「あーいや…あー蚊にでも刺されたんだろう…なぁー。ちょっと痒いような…」
その彼女はご丁寧に自分の手鏡を渡してきた。
鏡をのぞいたところで何も変わらない。ただ頭を垂れるしかない。
「おいおい、勘弁してくれよ…」
彼女には聞こえないくらいの声を出す。
そこへ彼女の指導係の新山明美がやってきた。
「こーら橘!気づいててもそこはプライベートなことなんだから、察しなさい?」
言われた彼女はえ?え?と何が何だか分かっていない。
プライベートていうな、プライベートて!とは口が裂けても言えない。
未だに分かっていない彼女は指導係に助けを求めた。
最初のコメントを投稿しよう!