第3章 *一人暮らしってふと寂しくなるもんよ*

2/9
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
不覚だ。こんなときに風邪を引くなんて。 数日前からなんだか身体がだるいと思っていた。ベッドからのそりと這い出てリビングへ向かった。 一人暮らしのそこまで広くもないリビング。端から端まで見渡し、毎朝欠かさず飲んでいるサプリを水で流し込んだ。 ―ゴクンッ― 「はぁ…はぁ…はぁ…」 ソファーに力なく座った。こんなことをしている場合ではない。今日は朝から会議があり、いつもよりも早めに出なければいけないというのに。しかし、身体が言うことを利かない。 なんとか身体を動かし、ソファーから手の届く範囲にある救急箱を取り出した。 蓋の上に赤い十字架のマークが付いており、救急箱と書かれたそれは若干の埃をかぶっていたが普段使わないため致し方がない。埃に注意し蓋を開けるとツーンと鼻に付いた。 「うわ、消毒液ー」 こぼれていたのか消毒液のにおいがぷんぷんした。生憎なのか鼻は詰まっておらず、学生時代お世話になった保健室を思い出した。 ごちゃごちゃした救急箱から体温計を取り出し、電池が切れていないことを確認すると脇に挟んだ。 ――ピピピッー―― 目を(つむ)っていたから一瞬で鳴ったような気がしたが、その数分の内に再び眠りについていたようだった。 「おいおい、マジかよ…」 体温計は38.1℃を示していた。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!