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無意識の内に湿った唇に指を這わせ、その行動に自分でハッとした。じわじわと顔が赤くなるのが判ると、ひとりでに恥ずかしくなった。お酒を飲んでいた時よりも確実に赤くなっているんじゃないだろうか。
手の甲を首筋に当てれば熱さが多少和らぐ気がする。テーブルに置いたままの手付かずだった水を一気に煽るとすーっと落ち着きを取り戻した気がした。
とその時キッチンから夕貴がひょいっと顔を出す。
「ねぇ、隆二さん」
急に声をかけられ肩がびくっとした。気付かれてないだろうか。ソファーの上で姿勢を正すため身動ぎをし、平静を装って返事をした。
「ーーっん、どうした?」
「いや、そろそろ服着たらどうかなっと思って?」
自分の格好を改めて見てみれば上半身は裸のままだった。そう言えば身体が冷えてきた気がする。
自分が裸だと気づいた瞬間、くしゃみが出た。
ーーくしゅんーー
「もうー、風邪なんて引いても面倒なんて見ませんよー」
一度キッチンに引っ込んだ夕貴は、準備が出来たらしい料理を持って現れた。テーブルに料理を並べ終えるとハンガーにかけてあったパーカーをそっと肩にかけてくれる。
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