第一章『まずは友達を作るところから始めよう』

3/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
別に何かの小説のように、他人と関わると人間強度が下がるからだとか、別に見た目が恐いから誰も近寄ってこないとか、コミュニケーション能力が著しく低いからだとか、そんなんではない。 ただ、何故か気付いたらクラスで孤立していた。いや、孤立していたというのは飛躍し過ぎた表現だったろうか。取り残された……の方がまだ柔らかい表現しているな。 とにかく、僕はリア充とは程遠い下のランクの人間なのだ。そして、新学期。新しいクラス。去年の僕とはおさらばだ。グッバイ去年の僕。こんにちは今年の僕。 しかし、僕もバカではない。いきなり彼女を作るとか、そんなバカみたいに高いハードルを掲げたりしない。 六十キロからのダイエットで、一日で十キロ痩せるなんて目標は掲げないだろう? それと同じだ。まずは、そうだな。 友達を作るところから始めよう。 そうだ。異性とは言わない。同性でいいんだ。とにかく友達と呼べる奴を作ろう。 登下校を一緒にする。忘れた教科書なんかを借りれる。ノートを見せてもらえる。昼飯を一緒に食べれる。昼休みなんかに談笑出来る。放課後に遊べる。携帯でメールなんかを気軽に出来る。ペアを作れと言われれば真っ先にペアになれる。 そんなことが出来れば、まあ友達と呼んでもいいのではないだろうか。そもそも友達ってどこから友達なんだ? 僕からしてみれば、だいたい上で挙げた事が出来れば友達だが、「友達になろうよ」と言えば友達なのか? それは僕はなんか違うと思う。 そんなことはどうでもいいが、よし。とにかく最初の目標は決まった。今年は、今年こそはリア充の学生ライフを過ごしてみせる。 「櫻井、櫻井君。君のことだよね?」 櫻井。 確かに僕は櫻井だ。櫻井は僕だし、他の誰でもないはずだけど、しかし櫻井ってそこまで多くはないけどそれでも少ない苗字ではないだろう。 つまり、今呼ばれた『櫻井』とは僕ではない他の『櫻井君』だ。考えてもみろ、さっきの多分女の声だぞ? 女子生徒と会話なんてロクになかった。両の指で数える程度だ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!