1人が本棚に入れています
本棚に追加
やっぱりスベるのはゴメンなので、無難に済ますか。いや、無難に終わらせるのもそれはそれで「櫻井君って、つまらない人間なんだ」とかいう印象を持たれてしまうかもしれない。
それは阻止せねば。スベらずに、かつつまらない人間だと思われずに終われる無難な自己紹介……。自己紹介とは実は奥深いものだ。
どうしようか。いやまあ、ここで考えても仕方がないし、教室で自己紹介始まってから他の奴らの聞きながら考えよう。
そういえば、さっきの櫻井君を呼ぶ女生徒の声がいつの間にか消えている。ほら見ろ、やっぱり呼ばれていた櫻井君は僕ではなく他の誰か別の櫻井君だったのだ。
僕が学校の校門をくぐる頃には、さっき以上に周りは賑わっていた。僕と同じ新二年生。一つ上の新三年生。そして去年の僕と同じようにまだ見ぬ高校生活に夢と希望を持ち、そのいつもより軽い足取りで歩く新入生。この段階では、不安とかはないのだ。
そう。去年の僕がそうだったからだ。だけど、直に知ることになるだろう、高校生活の厳しさというやつを。今はせいぜい楽しい生活に胸踊らせておくといい。
とりあえず、クラスの確認をしなくてはならないと。新しいクラスの発表が校門を入ってすぐの広場で発表されていた。
「ねーねークラスどこだった?」「わたし二組」「うそー私一組だー」「やったあ私二組、一緒だね」「今年も宜しくね」「あいつ何組だったかな」「探そ探そ!」「教室いこーぜー」
……全員何かしらで死なないかな。
人を怨念で殺せるなら、多分あいつら僕の怨念で死んでるだろうに。残念だし、助かったなお前たち。
さて、仲のいい友達はいないが、僕も新クラスを確認しないと。早く教室に行きたいしね。えーっと、櫻井……櫻井は。
二年三組。
あった。
最初のコメントを投稿しよう!