第一章『まずは友達を作るところから始めよう』

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正直クラスは割とどうでもいい。結果として、高校デビュー改め高校二年デビューを果たそうとしている僕としては、出来るだけ一年の時の僕を知らない人が少ない方が好都合だな。 どっちにしろ、そもそも僕は他人の記憶に残るほど目立つタイプではなかったし、そんなカリスマ性も残念ながら持ち合わせていない。「櫻井君? ……ああ櫻井君ね」とか、気のつかわれた苦笑いの笑顔を向けられながら、記憶にはないというのに適当に合わせられるのがオチだ。 我ながらなかなかリアルな予想だな。だけど、これが当たってほしくはない。これが当たれば完全に僕は悲しい奴じゃないか。 上履きに履き替えて教室に向かう。四階まで階段を上っていくのは割かし体力を使う。まして帰宅部中の帰宅部たる僕には、朝から何という重労働をさせるんだと呟きを吐きたくなるレベルだ。 教室についたので、普通にドアを開けて入った。ガラガラという横開き特有の音を鳴らしながらドアは開かれた。 ザワザワ。 なんて実際聞こえはしないが、既に教室の中は複数の生徒による雑談が交わされていた。なんだこいつら、どんなコミュニケーション能力してんだよ。初対面か? いや、多分一年の時の同じクラスだった奴と喋っているだけだ。 そうでなければ、奴らのコミュニケーション能力は俺の想像を、そして俺の能力を遥かに越えることになる。どんだけスペック高いんだ。 出席番号順に座るらしいな。黒板に張られている座席表を確認すると、今日最初のラッキーが起こった。席が一番後ろだ。神様さっきまで呪うとか言ってゴメンなさい。
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