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漫画なんかで、何の取り柄もないようなラブコメ主人公が比較的高確率で座ることになる席。逆説的な証明で、つまりこの席に座る奴こそが真の主人公。そうだ。主人公はこの僕だ。
友達が一人たりともいない、そんな寂しい主人公があっていいのか? いや待て。僕は主人公なんだ、きっとこれから主人公であるカリスマ性を発揮し友達を作るのだ。
きっとそうに違いない。
「あれ、櫻井もこのクラスか」
名前を呼ばれたような気がしたので、顔を微かに動かし、横目で声の主の顔を確認する。男だ。誰だっただろうか。僕にこんな爽やか男子の友達はいない。
「また同じクラスだな、よろしく」
あ、そうか。一年の時同じクラスだった奴か。言われてみれば何度か会話したことがあるような。えーっと、誰だったろうか、あんま記憶にないや。
「あ、ああ。よろしく」
こんなこと滅多になかったから、少し緊張した。
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