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そんな彼が呼んでくれた。
おかあさんって。
あの子は私の事を自分の母親のように思ってくれていた。
隣の小母さんではない。
美羽のお母さんでもない。
自分の母親として。
その二人が今、挙式を挙げようとしている。
こんなに嬉しい事はない。
私は懐から写真を取り出した。
それは古びれていて端が少し黄ばんでいる。
亡くなる前に撮った若かりし頃の主人の写真だ。
隣には幼い美羽が映っている。
今日の結婚式の為にわざわざアルバムから外してきた、お気に入りの写真だ。
私はその写真に向かって話しかけた。
「ねえ、あなた。私、今日という日をあなたと一緒に迎えたかったわ」
そう。美羽のウエディングドレス姿を見せたかった。
できればバージンロードを一緒に歩いて欲しかった。
しかし当然だが、写真からは何も返事はない。
それでも私はそのまま話を続ける。
「私、間違っていなかったよね?美羽の結婚相手が孝くんで間違ってないよね?ねえ、あなた」
私はそう言うと写真をじっと見つめた。
すると気のせいか、少しだけ主人が微笑んだような気がする。
「そうだよ」って天国から二人を祝福するように。
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