gift ~たったひとつの贈り物~-2

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リビングに入ると母親はお茶の準備をするといい、キッチンへと消えて行った。 私は椅子に座るとコウにも座るように促した。 でも何故かコウは座ろうとせずに奥の部屋を見ている。 そこは和室で仏壇がある部屋だ。 私の実家はリビングと和室が襖一つで繋がっていて、いつもガランと開けている。 だからリビングからも仏壇がよく見える。 本当は閉めて別々の部屋とした方がいいのかもしれないが、私も母親も開ける事を望んでいる。 こうしていれば父親といつも一緒にいられるからね。 コウはその和室をぼんやりと見ていた。 いつもなら直ぐに椅子に座るのにどうしたのだろう? コウの行動に違和感を感じた私は声をかけた。 「どうしたの?座りなよ」 「…小父さんに挨拶しようと思って」 「命日でもないのに?」 「ん」 コウは短く返事をするとまた和室に視線を移した。 私はようやくコウが何を思っているのかわかった。 …お父さんに挨拶したいんだ。 だから仏壇を見ているんだ。 するとお茶の用意が終わった母親がキッチンから戻ってきた。 手にはトレイがあり、湯呑が乗っている。 「どうしたの?座ってお茶でも飲みなさいよ」 母親は椅子に座らないコウを見ながら言った。 恐らく私同様に不思議に思っているのだろう。 だから私はさっきの会話を話した。 「お母さん、コウがお父さんに挨拶したいって」
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