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リビングに入ると母親はお茶の準備をするといい、キッチンへと消えて行った。
私は椅子に座るとコウにも座るように促した。
でも何故かコウは座ろうとせずに奥の部屋を見ている。
そこは和室で仏壇がある部屋だ。
私の実家はリビングと和室が襖一つで繋がっていて、いつもガランと開けている。
だからリビングからも仏壇がよく見える。
本当は閉めて別々の部屋とした方がいいのかもしれないが、私も母親も開ける事を望んでいる。
こうしていれば父親といつも一緒にいられるからね。
コウはその和室をぼんやりと見ていた。
いつもなら直ぐに椅子に座るのにどうしたのだろう?
コウの行動に違和感を感じた私は声をかけた。
「どうしたの?座りなよ」
「…小父さんに挨拶しようと思って」
「命日でもないのに?」
「ん」
コウは短く返事をするとまた和室に視線を移した。
私はようやくコウが何を思っているのかわかった。
…お父さんに挨拶したいんだ。
だから仏壇を見ているんだ。
するとお茶の用意が終わった母親がキッチンから戻ってきた。
手にはトレイがあり、湯呑が乗っている。
「どうしたの?座ってお茶でも飲みなさいよ」
母親は椅子に座らないコウを見ながら言った。
恐らく私同様に不思議に思っているのだろう。
だから私はさっきの会話を話した。
「お母さん、コウがお父さんに挨拶したいって」
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