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お嬢さんを僕にください。
私はコウのその言葉にどう接すればいいのかわからず、ただポカンと見るだけだった。
だってこういうのって結婚を決めた時にする挨拶でしょ?
明日結婚式なんだし。
しかも私達、もう結婚しているんだし。何で今更?
母親も私と同じ気持ちだったらしい。不思議そうな顔でコウを見ている。
「孝くん?」
「小母さん、本来は入籍前に挨拶をすべきなのにこんなに遅くなってしまった非礼をお許しください」
「そんな…いいのよ」
「でもこれだけは断言します」
「…」
「ミウは自分が幸せにします」
「孝…くん」
「その事を小父さんと小母さんの前でしっかりと挨拶したかった。小父さん、できればあなたの顔を見ながら挨拶がしたかった」
「…お父さん」
母親はそう呟くと振り返り後ろの仏壇を見た。
その顔は目に涙が浮かんでいて今にも泣きそうなだけど、どこか微笑ましい。
きっと溢れんばかりの感情を父親と共有しているのだろう。
そんな母親を見ていると私までもが泣きそうになる。
コウはそんな私達を優しく見守るように見ていた。
そしてまた頭を深々と下げて言った。
「改めまして、ミウを…いやお嬢さんを僕にください」
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