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「あ!!今、笑っ」
「ってない………。もういいから…早く屯所……戻るよ…」
沖田の言葉を即座に否定すれば、歩き始める。腰に刀を差し、そんな葉月の背中を見てはクスっと笑って後に続いた。
この青年…いや、少女は名前を葉月と言い、沖田が言ったように外へ出る時は男装をしている。
頭の上で結ってある黒髪は腰の長さまである。
だが、何故だか葉月の目はどこか冷めているような…生気を感じられないような…そんな瞳をしていた。
そこを除けば、普通に男には見えず中性的と言えばしっくりくるだろう。
現に今、町を歩いている葉月は町娘達からちらちらと視線をもらっている。
「そういえば、今回の任務は割と長かったですね」
「……四日程の任務って…長い…??」
「長いに決まってるじゃないですか!!私、遊ぶ相手がいなかったんですから!!!」
隣を歩く沖田は悲しそうな表情をしては、葉月の反応を見た。
葉月はチラッと睨んでは沖田の片方の頬を抓った。
「…私は…総ちゃんの…新撰組一番組組長の…遊び相手じゃない…それから…私の反応見て…遊ばないで…」
「あひゃひゃ!ひらいひらいひらいれすよ~……葉月ひゃん??」
抓ったまま止まる葉月。一点を見つめている。
沖田も同じように葉月が見つめる方へ視線を向けた。
「…そこの路地から…血の匂い…」
「私が行きますよ。役目ですから」
にこっと笑って葉月の左手を抑えた。
鍔を上に上げていたのに気づいていたようだ。不意を突かれた葉月は、咄嗟には動けなかった。そのまま沖田の背中を見送る。
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