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ポタ…
ポタ……
真っ暗な部屋に仰向けになっている女がいた。
何やら隙間から吹く、少量の風のせいか…鉄の匂いが充満している。
女の生死はわからない。ただ、胸の中心に刀が突き刺さっていた。
「…っ……」
その女を傍らで一人の男が黙って見ていた。唇を噛み締めて。
「……………葉月さん……」
男は女の胸に刺さっていた刀を引き抜いた。
ザァァッ……
春の心地よい風が、木の下の…木陰で眠る青年の頬を撫でる。
くすぐったいのか、撫でられた頬を指の爪で掻いた。
「……う…ゃん……そ…ちゃ……総ちゃん」
「ん、………うん…??」
眠そうに顔を上げれば青年の知り合いなのだろう、同じ青年の顔が入ってきた。
「こんなところで…サボらないで…源さんから何か言われる…」
「……あと、もうちょっと…」
五月蝿いと言わんばかりにまた同じ態勢で寝ようと体を捻った瞬間。
ザクッ!!!
顔の真横すれすれにキラリと光る刀の刃が……。
「起きて…私が何か言われる」
「はい。すみません」
やれやれと、体を起こす。
後ろ頭をぽりぽりと掻きながら反省の色を見せないこの青年。名は沖田総司だ。
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