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肩ほどの長さの黒髪をちゃっちゃと半分の量だけ結い上げる。
そして、隣で同じように寝かせていた刀を杖代わりに立ち上がった。
お尻の草等を払いながら、葉月と呼ばれる青年ににこっと笑った。
「やぁ…怖いですね。葉月さんに逆らうと切腹より痛い目見そうです」
「……分かってるなら…きちんと稽古に出て…歳兄は…怒ってて…勇兄は…心配してた…」
笑顔の沖田を軽く睨んでは、背を向けた。
「ははっ。それで、私が怒られると思って慌てて来てくれたんですね」
「…違う…絶対…」
葉月は立ち止まり、顔を少しだけ振り向かせる。
柔らかな長い黒髪は腰まであり、風に靡けば…陽の光で艶やかさをまとっているのが分かる。
「だーって…屯所の外では女子の格好をしないといけないのに…男の格好のままじゃないですか」
クスクスと笑い、葉月に近づく沖田。
シュッ……
「………あらら…からかいすぎちゃいました??」
「勘違い…しないで…。たまたま…任務が終わって…屯所へ戻ったら歳兄達の…話を聞いて……他の者の手を…煩わせるのも…と思ってそのまま来たまで…おまけに…本人は寝てる…」
切っ先と鋭い眼差しを沖田へ向ける。葉月は寝ていたのにも関わらず、反省の色がない沖田に怒っているのだろう。
拗ねたような、ふて腐れた顔を見せた。
胸の前で両手を上げてはいるが、沖田は尚も笑っている。
「サボってたのはほんとにごめんなさい。ただ、葉月さん任務の時しか女子の格好しないじゃないですかぁ…せっかくの正装なんですから、お迎えも……と、言う残念感からでして……」
「………くだらない…理由…」
そう言って葉月は刀を鞘へとしまう。
その際、沖田はある事に気づいた。
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