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「…………んんっ」
不意に胸元に感じた息苦しさによって、俺は夜中に目を覚ました。
まるで、何かが仰向けの体勢で横になっている俺の上にのしかかっているかのような、そんな圧迫感の正体を突き止めるべく、ふと、薄く開いた両目を自らの体に向けると……。
「すぅ…………すぅ…………」
そこには、被っていた掛け布団を蹴り飛ばし、しかし、それだけでは飽き足らずに、眠っていた俺の真上にまで侵出して来ていた小さな女の子の姿があった。
閉じられたカーテンの隙間から射し込む月明かりが、俺の上でうつ伏せの体勢で横になっている女の子の顔を優しく照す。
波打つようなヘイゼルの髪を持ったその子の、屈託(くったく)の無い子供らしい寝顔が、互いの息が届きそうなほど近くで、すやすやと安らかな寝息を立てていた。
数秒ほど、俺は彼女の寝顔を見つめた後、
「…………ふっ」
つい、吹き出すように破顔した。
そして、俺は彼女、アレックス・ミーリックを抱き上げると、再びアレックスが最初に眠っていた位置へと寝かせ直した。
きちんと彼女の上に、彼女自身が蹴飛ばしてしまった布団を掛け直すと、俺自身も所定の場所で横になり、布団を被り直した。
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