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ぶっきらぼうに返事をしながら、俺はウカを促す。
以前としてへらへらとした表情のまま、しかし、彼女はここで、俺にとって予想外の言葉を吐いた。
「あの翠眼の娘……。アレックスは、今年でいくつになる?」
「……えっ」
「いくつになるのじゃ?」
「……そ、それは…………」
僅かに言葉を詰まらせ、同時に視線を泳がせた俺に、
「答えられぬじゃろ?」
ウカは、いかにも得意げな感じで言った。
「…………」
「アレックスが生まれたのは、今から半世紀以上も前。この『イザナギ』よりも、遥か西方の地じゃな。……じゃが、にも関わらず、長命とはいえ成人するまでの成長の早さは人間と遜色(そんしょく)のない吸血鬼(ヴァンパイア)の……。いや、吸血鬼の血を引くあの娘が、未だに幼女の姿のままなのは…………」
そこで、わざとらしく言葉を切った彼女は、ちらりと、様子を窺(うかが)うような視線で俺を一瞥した。
対して、俺は何も口にする事が出来ないまま、ただウカの琥珀色の瞳を見つめ返していると、
「……さては、あの娘、“封印”でもされておったな」
「…………あぁ、そうだよ」
とりあえず、ウカの今の物言いについては、俺としても色々と聞きたい事はあったが……。
まず、俺は彼女の言葉を肯定すると、もう一度、湯煙の向こうで無邪気にはしゃぐ女の子へと視線を向けた。
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