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「なんとも不思議な縁(えにし)じゃな」
「そうだね」
適当な調子で返事をしながら、俺は更に続けた。
「長い間縛り付けられてた彼女の時間は、もう一度動き出したんだけど……。でも、“封印”の弊害で、あの子の自我は混乱したみたいでさ…………」
そのせいで、アレックスと会ったばかりの頃は、彼女の要領を得ない発言が目立った。
あの時にあの子が言っていた『わたしの友達』というのは、後に、彼女の母親であるサンドラという吸血鬼の女性が、事件の際に邂逅(かいこう)を果たした一人の少年の事を指していたと分かったのだが……。
俺とシーマがそこにたどり着いた時には、事態はかなり逼迫(ひっぱく)していた。
その時に『ブラン・ド・シエル』の館長を務めていた、アルバートとの間に、なかなかの悶着があったのだ。
その件に関しては、結果的に、俺達は事なきを得たが……。
「……まぁ、それでも、アレックスも今はだいぶ落ち着いたし、きっともう大丈夫だと思うよ」
「……そうか」
落ち着いた声で、ウカは一言だけ言葉を述べると、それ以上何かを聞いてくる事は無かった。
「ねぇ、ウカ」
「なんじゃ?」
ここで、俺は彼女に対する仕返しのつもりで、いくつかの質問を投げかけてみる事にした。
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