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「別に、なんでもないよ」
軽くかぶりを振って応えると、俺は、そろそろ湯船から上がるべく、その場を立ち上がった。
すると、俺は少し長く湯に浸かりすぎていたためか、立った瞬間にくらりと立ち眩みを起こしてしまった。
咄嗟に頭を押さえつつ、足を踏ん張ってどうにか転倒を避けると、湯煙の向こうで遊んでいるアレックス達に声を掛けた。
すると、彼女達はほどなくして水遊びをやめると、全員がこちらまで歩み寄って来た。
それを確認した後に、俺は湯船から上がった。
湯上りの火照った体に、既に日も落ちたこの時間帯の空気は心地よかった。
ペタペタと浴場の床を進みながら、俺は大きく深呼吸をした。
二、三回ほど、ひんやりとした空気と熱い呼気の入れ替えを行うと、俺の体を風呂上り特有の爽快感が包み込んだ。
「んんっ……!」
次いで、俺は両腕を大きく真上へと伸ばして、肩から上にかけての関節を伸ばしていると、
「レオン」
背中から、呼び止めるようなウカの声が聞こえて来た。
「なに?」
振り返りながら、俺は尋ねると、
「主、明日はなるべく安静にしておった方がよいぞ」
妙な真剣みを帯びた、どこか意味深長な言葉が返って来た。
「……え?」
俺は、胸に一抹の不安を覚えつつ、すぐさま彼女に聞き返した。
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