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「私は、あなたが『イザナギ』に滞在する間、あなたの護衛役を任された人間でしょう?」
「……う、うん」
曖昧に返事をしながらも、微妙に噛みあっていない気のする彼女の返事に、俺は、ある種の既視感のようなものを感じた。
これは、確か…………。
……そうだ。
この、何とも言えない違和感のような感覚は、およそ一月ほど前の、シーマと出会って間もない頃のものによく似ている。
あの時の彼女は、いくら護衛の一環とはいえ、俺が入浴中の浴室に入って来たり、ベッドまで共有したりと、なかなかの職務の徹底ぶりだった記憶がある。
…………と、言う事は、つまり、リンドウも同じ事を考えているのだろうか?
その辺りの確認の意味も含めて、一応俺は彼女に尋ねた。
「……だから、その務めを全うするために、君は部屋を移動して来たって事?」
こくりと、リンドウは小さく首肯した。
だが、しかし……。
「でも、護衛って言っても、この学舎にいれば特に危険な事なんて無いんじゃないかな?」
大して深い考えもなく、俺は、ただ思った事を口にした。
ウカの話では、『魔厳』の管轄域には結界が張ってあるという事だった。
すなわち、ここまで『百鬼夜行』に侵入される恐れは無いのだ。
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