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その言葉は、今までの彼女の機械的なものとは異なり、確かなぬくもりを伴って俺の鼓膜を揺さぶった。
やがて、室内からはスタスタとこちらに歩み寄る気配が伝わって来た。
今まで逸らしていた視線を正面へと向け直すと、目の前にリンドウの顔があった。
藍色の瞳が、じっと俺の目を見据える。
少しの間、俺は何かを言おうか迷ってから、
「とりあえず、部屋に入れてくれるかな?」
入浴前に脱いだ巫女装束や下着類を抱えたまま、控えめに尋ねると、
「…………」
なぜか、彼女は俺の腕の中を注視してから……。
きゅっ。
おもむろに、俺の着ている白衣(びゃくえ)の袖を掴んだ。
「えっ?」
どうしたの? と、俺はその後に続けようとしたのだが…………。
ぐいっ 。
「わっ!」
それよりも早く、俺は強い力でリンドウに袖を引っ張られたため、思わずたたらを踏んでしまう。
「えっ!? ちょ、ちょっと…………!」
慌てて彼女に呼び掛けるものの、
「脱いだ衣類は、すぐに洗い場に干すのがここの決まりだから」
それだけ言うと、彼女は俺の袖を掴んだまま、どこかに向けて歩き始めてしまった。
おそらく、言い方からして洗い場に向かっているのだろうが……。
ぐいっ!
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