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そこで、俺は最初よりも更に強い力で引っ張られ…………。そして、その拍子に衣類を抱えていた右腕が、ふっと、俺の胸元から離れてしまった。
「っ!」
ぎゅっ!
はっと息を呑み込みつつ、俺は、どうにか脱いだ衣類を抱え直したのだが……。
少々乱暴に腕を引かれた弾みで、ひらりと、今まで抱えていた衣類の一つが廊下に落ちてしまった。
それは、俺が持っていた衣服の中では、最も布地の面積が少ないものだった。
真っ白で、無地で、三角形のような形をした…………。
女の子用の、パンツだった。
「…………」
一瞬、俺の中の時間が完全に停止した。
「……あっ……」
掠(かす)れたソプラノの声音が、ごく控えめに俺の周りの空気を揺さぶった直後に…………。
ぐっ!
俺は、すぐさま足を踏ん張った。
次いで、
「ねっ、ねぇ……!」
とてつもない焦燥に駆られながら、慌ててリンドウを呼び止めようとした。
しかし、彼女は何かの変なスイッチでも入ったかのように、いっこうに足を止める気配が無い。
ならばと、俺は実力行使に出るべく、足に強く力を入れた。
……だが、あいにく足元はよく磨かれた板で出来ていて、その上、足袋(たび)を履いた足ではろくに制動を掛けられない。
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