悪鬼羅刹

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くっ…………! すぐ近くにあるのに、求めている物に手が届かないもどかしさを感じながら、ついに万策尽きたかと諦めかけた、その時……。 ひょい、と、俺が穴の開くほど見つめていた真っ白いパンツが拾い上げられた。 数瞬ほど、俺はきょとんと目を瞬(しばたた)かせた後に、ゆっくりと視線を上向けると……。 そこには、俺のパンツを手にしたアレックスが立っていた。 「アレックス!」 咄嗟に彼女の名前を呼ぶのと同時に、俺は自分の中で張り詰めていた緊張の糸が弛(ゆる)むのを感じた。 これで、大丈夫だろう。 ほっと胸を撫で下ろしながら、俺は続けて彼女に拾ったパンツを持ってくるよう頼もうとした。 ……その、次の瞬間。 ふっ、と、俺の目の前で、アレックスは手にした一枚(ひとひら)の純白を、頭上高く掲げた。 …………えっ。 それに対して、俺が何かしらの疑問を呈するよりも早く、 「レオンさん!」 当の彼女は、俺のパンツを掲げたまま、なぜか得意そうな表情を浮かべた。 「あっ、アレックス?」 「レオンさん!」 「……アレックス?」 「レオンさん!」 (…………) ……だめだ。 どうやら、彼女はこの状況を何かしらのゲームか何かと勘違いをしているようだった。
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