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「レオンさん!」
彼の数歩後ろから、ヘイゼルの髪の毛に、翠眼(すいがん)の女の子が元気よく歩いて来た。
見に纏ったワンピースをひらひらと揺らしながら現れた女の子、アレックスは、楽しそうに彼の名前を呼びながら……。
くるくると、おそらく彼の物と思われる真っ白のパンツを振り回していた。
「…………」
(これは、いったい…………)
私は、向こうの状況が分からずに、ただ様子を見守るしか出来なかったが、
「ほぅ…………。レオンも、難儀な事じゃのう」
隣を歩くウカには、向こうの状況が分かったらしい。
一瞬だけ、私は彼女に詳細を訊こうか迷ったものの……。
だが、流石にそれはやめておいた。
向こうの様子からも、ウカの口ぶりからも、レオンさんにとっての何かしらの災難が関係している事は目に見えていた。
やがて、レオンさん達は私達の方に気づく事なく、目の前を通り過ぎて行った。
「あいつらは、洗い場に向かったんじゃろうな」
「そうですね」
レオンさんも、それからアレックスも、その手には入浴前に着ていたと思しき衣類を手にしていた。
と、すれば、行き先は洗い場だろう。
少しの間、ウカはレオンさん達が消えていった通路を見つめていたが、
「……さて。それでは、こちらもこちらの仕事を片付けるとするかのう」
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