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やがて正面に向き直ると、落ち着いた口調で呟いた。
「……えぇ。そうですね」
彼女のその言葉には、私も心から同意しつつ、再び前へと視線を向けた。
今から片づけなくてはならない私達の仕事……。
それは、『百鬼夜行』の討伐に関する、より細かな作戦会議だ。
「ウカ」
「なんじゃ?」
「……やはり、“鵺(ヌエ)”についての情報は、何も無いのですか?」
「うむ。流石、『正体不明』の二つ名を冠するだけの事はあるのう」
にやりと口元に不敵な笑みを浮かべながら、しかし、その口元とは裏腹に、笑っていない琥珀色の瞳をどこか遠くへと向けると、流れるような口調でウカは言葉を続けた。
「新しい『百鬼夜行』の頭という以外には、今朝、勾玉の映像で見たあの姿だけが、唯一の“鵺”に関する情報じゃ」
「そうですか」
短く彼女に返事をした後、私も彼女のように視線を遠くへと向けて、自分の考えの整理を始めた。
彼女の言葉通り、“鵺”に関しては素性、実力、目的、とにかく全てが謎なのだ。
唯一分かるのは、“鵺”の容姿のみ。
すらりとした、長身痩躯の体。
黒い髪の毛に、黒い瞳。
こうして外見の特徴だけを並べ立てていくと、ただの人間の青年にしか思えないが……。
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