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彼女は一度言葉を区切ると、小さく唸(うな)りながら、顔をしかめた。
「ううむ……」
言い様の無い歯痒(はがゆ)さを感じているのか、どこか不快そうな様子の彼女は、
「……今回の『百鬼夜行』は、今までのものとは異なって、動きがまるで読めん」
ため息混じりに、自らの調査結果を述べた。
「今までの『百鬼夜行』には、多くの人間がいる場所へ向かったり、空間に漂う魔力の密度が高い場所へ向かったりと、決まった動き方があったのじゃ」
「それが、今回の『百鬼夜行』には見受けられないという事ですか?」
「うむ」
依然、難しそうな表情を顔に貼り付けたまま、ふっと、ウカは天井を仰いだ。
ぼんやりと、ここには無い何かを眺めるような緩慢な動きで、彼女は視線を彷徨(さまよ)わせ…………。
やがて、
「くしゅっ!」
唐突に、彼女は大きなくしゃみをした。
ズズッと鼻水をすすりながら、今度は睨み付けるような眼差しで天井を見据えた。
「くしゅっ!」
再び、彼女は大きなくしゃみをする。
もしかして、天井付近の行灯(あんどん)の明かりが眩しかったのだろうか? などと考えている内に……。
なんと、ウカは自らの狩衣(かりぎぬ)の袖で鼻を拭(ぬぐ)ってしまった。
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