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「ウカ……」
思わず目を丸くしながら、言葉を失う私の前で、彼女は『なんじゃ?』とでも言いたげな表情を浮かべつつ、小さく咳払いをした。
「とにかく、この話の続きは部屋に着いてからじゃ」
ウカはそう言うと、いくらか歩調を速めてスタスタと通路を歩き始めた。
「……えぇ。そうですね」
数瞬の後に、私は彼女の言葉に同意を示してから、早足で彼女の後を追い掛けた。
6
…………しっ、しんどかった。
思わぬ苦行を強いられた俺は、リンドウに連れられて洗い場まで歩くと、すぐにその場でへたり込んでしまった。
ようやく俺の白衣の袖は彼女から解放された。
そうすると、
「……アレックス」
俺はすぐに、力無い声音でアレックスを呼んだ。
程なくして、とことこと、こちらに向けて歩いてきた来た彼女から自らの下着を受け取ると、俺は吐き出すようなため息をついた。
…………はぁ。
「それじゃあ、早速持って来た洗濯物を洗って……」
「……うっ、うん。分かった。分かったから……。その、ちょっと、待ってて…………」
ガリガリと削られた、俺の中の大切な何かが復活するまでの間だけ…………。
しばらく、俺は無心で洗い場の床を見つめていた。
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