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しかし……。
それからおよそ数十分が経った頃。
俺は、不意に枕元から聞こえてきたすり足のような足音によって、ふと目を覚ました。
最初は、いつものようにアレックスがトイレに起きて、その付き添い役として俺を起こそうとしているのかと思った。
「……アレックス?」
小さく、俺は枕元に向けて呼びかけてみた。
けれども、向こうからは返事が来ない。
「アレックス?」
もう一度、俺は彼女の名前を呼んだ。
……だが、相変わらず返事は返って来ない。
この距離であれば、聞こえていないという事はないのだろうが……。
いったい、どうしたのだろうか…………?
俺は、しばし起き抜けの頭で考えてから、もしかして、彼女はおねしょをしたのでは? という一つの仮説にたどり着いた。
単に、恥ずかしくて返事が出来ないのかもしれない。
そこまで考えてから、俺は今まで横になっていた布団から上体を起こした。
その時に、俺は体に今まで感じた事も無いような倦怠感を覚えたのだが……。
まぁ、ひどく疲れが溜まっているのだろうと結論付けて、俺は足音のした方向へと向き直った。
「アレックス。どうしたの? もしかして、おねしょしちゃった?」
いかにも眠たそうなソプラノの声音で質問をした、その直後、俺がたった今思い浮かべたばかりの『アレックスおねしょ説』は跡形もなく崩れ去った。
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