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「……んっ。んん…………」
その時、俺が顔を向けているのとは全く違う方向から、アレックスのものと思しき声が聞こえてきた。
(…………えっ)
俺は、すぐに彼女の声が聞こえた方向へと視線を向けた。
すると……。
そこには、この暗がりの部屋の中で、何事も無いように布団をかぶって眠り続けるアレックスの寝顔があった。
俺の隣の布団で寝ている彼女は、今の俺の言葉に反応したのか、薄目を開けて何度か瞬きをした後、再び目を瞑(つむ)った。
まさに天使といった寝顔と共にアレックスが睡眠を再開すると同時に、枕元の方からは冷静な声が聞こえてきた。
「あなた、何を言っているの?」
透明感のある、綺麗な声音。
この声には聞き覚えがあった。
じっと、俺は目を凝らしてそちらを見つめた。
「……リンドウ?」
尋ねると、枕元の方から頷く気配があった。
ススッと、寝巻きの着物が擦れるような、衣鳴りの音が向こうから聞こえてきた。
周りが暗いため、明確な事は分からないが……。
どうやら、彼女は自分の寝巻きの中から何かを取り出したようだった。
「ねぇ。何やってるの?」
徐々に眠気の無くなってきた頭で、俺は少し考えてから、リンドウに質問した。
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