悪鬼羅刹

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サラサラと、流れるような筆運びで何事かを書き綴っていく彼女に向けて、俺は一つの問い掛けを発した。 「それは、何?」 対して、リンドウは書き物をする手を休める事無く、簡潔に答えた。 「これは、私がこの学舎に来てから、毎日書いてる日記」 「日記?」 聞き返した俺に、彼女はパラリとページを一つ捲りながら、 「そう。週に一度、『魔厳』の外に住んでる家族に送る、手紙に載せるための内容なんかをこうしてまとめておくの」 心なしか、少し嬉しそうに言った。 (家族への手紙、か……) 「……そう、なんだ」 返事をしつつ、俺は部屋に備え付けてあった壁時計へと目を向けた。 「いつも、こんな遅い時間に?」 尋ねると、リンドウは首を振った。 「いつもという訳ではないけど……。日記を書くのは、この『学舎』での務めを終えてからだから、大体これくらいの時間になってしまうの」 パチン。 そこで、彼女は日記を書き終えたのか、手にしていた筆記用具を鏡台へと置いた。 パタッと、軽快な音を立ててながら彼女は日記を閉じると、 「ねぇ……」 唐突に、今までとは異なる口調で尋ねて来た。 「なに?」 リンドウの雰囲気の変化に、俺は思わず緊張しながら、彼女に言葉を促した。
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