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それを受けて、彼女は少し何かを考えるような素振りを見せてから、おもむろに口を開いた。
「あなたは、今の自分の事をどう思ってるの?」
「えっ……」
全く予想していなかったその質問に、俺は思いっきり意表を突かれた。
その瞬間に、俺は自分の周囲の時間の流れが急速に遅くなって行くような錯覚に陥った。
「…………」
耳鳴りを誘発させるような静寂の中で、真っ直ぐに俺の目を見据える彼女の藍色の目を見つめたまま、しばらく、俺は何も言えずにいると、
「……ごめんなさい。やっぱり、なんでも…………」
彼女は、小さくかぶりを振って、自らの発した質問を取り下げようとした。
「あっ、いや、その……」
咄嗟に俺は口を挟むと、元通りの動きを取り戻した時間の中で、不器用に言葉を紡いでいく。
「……大丈夫だよ。ちょっと、びっくりしただけで…………」
ごほん。
俺は小さく咳払いをすると、気を取り直しつつ口を開いた。
「やっぱり、俺は元に戻りたいと思ってるよ。女体化してからそろそろ一ヶ月くらいになるけど、この体は今でも不便だしさ。……それに、色々気を使う事も多くて…………」
トイレの事やら更衣室の事やら、それから女体化してからはよく胸や尻などに感じるようになった周りの視線などを思い出しながら説明していく。
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