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すると、そんな俺の様子を見た彼女は、流石に気まずさを感じたのか、
「れ、レオン。別に、私は主を馬鹿にしておるわけではないぞ? じゃから、そんな顔をするな」
どこか居心地悪そうに、弁解の言葉を口にした。
「…………」
少しの間、俺は困ったように視線を泳がせるウカの顔を見つめていたが……。
ほどなくして、彼女から目を逸らしつつ、
「……いいよ。別に」
怒ったようなソプラノの涙声で、一言だけ呟いた。
とにかく、血で汚れてしまった体は洗い終えた。
目的を果たした俺は、すぐに脱衣場へと向かうために立ち上がろうとして、腰を浮かせた。
ガラッ!
……ちょうど、そのタイミングで背後の浴場と脱衣場を隔(へだ)てる扉が開かれた。
びくりと俺は肩を震わせつつ、恐る恐る振り返ると…………。
そこには、心配そうな顔をしたシーマが立っていた。
彼女は、大きな切れ長の黒い瞳で俺の顔を見据えると、驚いたように、はっと息を呑んだ。
一方、俺は彼女よりも数瞬ほど遅れて、息を呑み込んだ。
「っ!」
シーマに泣いているところを思いっきり見られてしまった。
慌てて、再びしゃがみ込みながら、俺は手の甲で涙を拭(ぬぐ)った。
だが……。
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