短い戦争

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二二〇〇年。戦争を知る日本人、その孫までもいないような時代。日本では外国との貿易摩擦が問題視されていた。 「輸出額が伸びなくて赤字だ」 「このままでは日本が…」 「どうにかしなくては…」 そんな会議の風景がTVで放送されたとき、国が二つ割れた。一つは力づく、つまり戦争派。もう一つは穏便に、つまり話し合い派。戦争派は考える前に動いてしまう若者が多くを占める。話し合い派は冷静に考え争い事を避けたがるアラフォー以降の人で多くを占める。 そんな中、話し合い派に所属する、歴史愛好会があった。 「アホとちゃうん?」 最近関西弁にはまってる少女と、 「歴史の授業ん時寝てたんじゃない?」 特に特徴のないこの話の主人公の少年。 「言われてるよ、特徴のない少年」 「るせぇ、関西弁にはまってる少女」 ま、そこそこ仲のいい愛好会。二人以外は幽霊会員の愛好会。 「ほっとけ」 『本日、戦争派と話し合い派がぶつかりました』 ―ブチッ 「あら、今のニュース見ないの?」 母親が訊ねる。 「馬鹿馬鹿しいから。このままじゃ国内で戦争が起こる。政府がちゃんと動けばいいけど」 「まずないでしょうね」 母親が呟く。 「だろうね」 「あんたも話し合い派でしょ?」 話し合い派で積極的に活動している母親が訊ねる。 「当たり前。歴史を勉強すれば戦争の恐ろしさぐらい…」 「でた。歴史を勉強すれば発言!」 母親がはしゃぎ出す。 「るせぇ」 まったく、これしか言わない。 「ほっとけ」 『全日本国民に告ぐ』 日本のあちこちのスピーカーの電源が入った。 「窓開けてー」 「自分でやれよ」 と言いながらも、気になって開ける。 「余計なお世話だ」 『国会で、任意による戦争を行うことが決定した』 その言葉を聞いた瞬間、歴史オタクの愛好会会員の二人が部屋から飛び出た。 「歴史オタクは余計だっ!」
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