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重い一撃を喰らったアルバイア偽は相当お怒りの様子だ。さっきより低い声でグルル…と唸っている。
「今度は俺から行くぞ」
狼は2歩後ろに下がり、その場から消えた。
アルバイア偽は目の前から忽然と消えた敵を探して辺りを見回す。
前。いない。後ろ。居るのはイヴンダートともう一人の敵。右。左。…
「どこ見てんだ?」
敵の声が聞こえた、と思ったその時。
頭にガツン!と衝撃が来た。
「節穴野郎」
狼は地面に着地して、昏倒したアルバイア偽を一瞥する。
アルバイア偽が自分の姿を見失った時。自分は別に消えた訳ではない。
その場で高く跳び上がり、アルバイア偽の頭にかかと落としを喰らわせた。
人間だったらしばらく起き上がれないだろうが、偽物といえど魔獣は魔獣。人間よりは丈夫だ。アルバイア偽は起き上がって狼に飛びかかる。
喉元を狙った攻撃を狼はまた避ける。続けざまに脛、頭、腹に爪が襲来するが、避け、弾き、蹴って外させる。
アルバイアの攻撃は狼に当たらない。
「格が違うんだよ」
アルバイア偽の腹に左足で蹴りを入れ、そのまま踏み台にして右足を振り抜き顔面に入れる。バキ、と音が響いた。
「…へぇ。魔獣って鼻血出るんだな」
狼の蹴りはアルバイア偽の鼻に直撃して鼻血を噴き出させた。
ここぞとばかりに狼は拳と脚でアルバイア偽を追いつめる。その素早い攻撃を捕らえられず、アルバイア偽は確実に弱っていった。
「これで最後だ」
渾身の力を込めた狼の拳はアルバイアの頭に直撃し、パキ、と頭蓋骨にヒビを入れた。狼は拳が当たっただけでは腕を引かず、そのまま地面に頭を減り込ませる。
戦闘不能。
狼はそう判断し、龍一に加勢した。
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