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自分の横に来た狼を見て、龍一はちら、と後ろを見る。
そこには戦闘不能になったアルバイアの姿。
「もう倒したのか?」
「時間と体力の無駄だから殺してはいない。すぐには起きない筈」
「でも油断はできないな。人間の方もさっさと片付けよう」
狼はこくりと頷く。
龍一の攻撃は格闘スタイル。スピードの上乗せがあるので拳で敵の胴体を貫くことができるので武器を必要としない。
狼も格闘スタイルだが、龍一のように止めは刺せない。
だから狼は、小振りの武器をそのパーカーのポケットに忍ばせている。
狼はパーカーのポケットに両手を突っ込んだまま、槍を振り下ろして攻撃してきたイヴンダートをひらりと避ける。
狼は、前のめりになったイヴンダートの背中にすかさず蹴りを叩き込み、地面に潰れたところで今度は腹を蹴り上げた。
鍛え抜かれたその蹴りの威力は尋常ではない。
蹴り上げられたイヴンダートはそのまま宙に浮かぶ。
普通ならあり得ないが、蹴り技を中心に毎日何時間も訓練した狼の技は常識を逸している。
「ぐはぁっ!!」
がは、と肺から空気を出し切ってイヴンダートは転がった。
イヴンダートだって訓練しているのもあり、狼が手抜きしたのもあり、そのイヴンダートはすぐに立ち上がる。
だが、それは間違った選択だった。
ひゅ、と狼の拳が、イヴンダートの首より少し横を通って行く。
瞬間。
ぶしゃあ、とイヴンダートの首から血が噴出した。
狼の右手に握られたカッターが、イヴンダートの頸動脈を切断していた。
このどこにでも売っている文房具は、狼が敵に止めを刺す為に使う立派な武器。
実はこのカッター、別にもうひとつ重要な役目も持っているのだが、それはまたいつか説明するとしよう。
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