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「ンのガキ…!」
仲間をまた1人失ったイヴンダートが、怒りに任せて槍を大きく振る。
「大きく振れば、確かに威力はあがる」
狼は最小限の動きでそれを避け、
「でも、隙も大きくなるんだぜ?」
敵の首にカッターを迸らせ、返り血がかからないように狼はバックステップで後退する。
すると、更に後方で伸びていたアルバイアの下に魔法陣が出現し、強制的に元いた場所に還されていった。
「へえ、アンタが召喚したのか」
既にもの言わぬ亡骸となったイヴンダートに狼は呟く。
無論、返事は返ってこない。
狼は亡骸から目を離し、戦況を確認する。
残り2人。
8人いたイヴンダートの内、自分が2人倒し、5人は龍一が倒した。
狼がアルバイアと戦っている間、龍一は、狼がアルバイアに向かう前に戦闘不能にさせた2人の息の根を完全に止めたらしい。
「新人が束になってかかってこようとも俺たちに勝てるわけねえだろ」
龍一はこちらを睨みつけるイヴンダートを鼻であしらう。
「新人じゃなくても、俺たちを倒すことはできないだろうけど」
狼が龍一の言葉を補足する。
「何だとっ!?その根拠は何だ!」
2人のイヴンダートがキイキイ騒ぐ。
その様子を見て、狼と龍一は顔を見合わせた。
「…まさかこいつら知らないのか?」
「この様子を見る限り、そうだろうな」
「…?何の話しだ!」
イヴンダートが騒ぎ立てるので、仕方なく教えてやることにした。
「この街から南に10kmほど行ったところに、かなり大きなイヴンダートの拠点があったろ?」
龍一は南を指差す。
「…聞いたことあるな。確かに大きな拠点があったはず。確かそこは2ヶ月前、ひとりのランダーによって壊滅させられた…と…か…」
イヴンダートの1人が、どこかで聞いた情報を思い出し、そして硬直する。
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