白い髪の能力者

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「あーあ、なんだかんだ遅くなっちまったな」 「うん」 「帰ろうぜ」 「うん」 2人はまた拠点に向かう。 狼と龍一は会話しながら ――というより、龍一が一方的に喋って狼が相づちをうっているだけだが―― 龍一が狼を引っ張ってトップスピードで拠点に走る。 範囲こそ小さいが、10人以上との戦闘だった。フィールドの後掃除をしないといけない。 フィールドで壊れた所はあまりないが、最初に狼が殴り飛ばしたイヴンダートが突っ込んだ店の陳列棚の補修がある。 それに、イヴンダートの死体が転がりっぱなしだ。 ランダーの情報網は広いから、今頃回収・補修に動いているだろうが、当事者の報告があるに越したことはない。 だから、とりあえず急ぐ。 「晩飯食った?」 「まだ」 「俺もまだ。一緒に食堂行くか」 「うん」 「あーでも、報告が先か。遅くなるかもな」 「うん」 「腹減ったー」 「うん」 一見狼は龍一に、適当に返事しているように思えるが、狼はいたって真面目に返事しているし、龍一もそれを理解している。 狼はこういう人間だ。 感情を表に出さない。 出し方など、とうに忘れてしまった。 「今日の晩飯何?」 「知らない」 「うおー、じゃあ楽しみだな。って、着いた」 気付いたら拠点の前に到着していた。龍一は足を止める。 あまりの速さに流れていた景色が静止し、夜空と木々を映し出す。 「さて、ボスに報告に行くか」 「うん」 2人は門をくぐり、拠点に足を踏み入れた。
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