9人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーあ、なんだかんだ遅くなっちまったな」
「うん」
「帰ろうぜ」
「うん」
2人はまた拠点に向かう。
狼と龍一は会話しながら ――というより、龍一が一方的に喋って狼が相づちをうっているだけだが―― 龍一が狼を引っ張ってトップスピードで拠点に走る。
範囲こそ小さいが、10人以上との戦闘だった。フィールドの後掃除をしないといけない。
フィールドで壊れた所はあまりないが、最初に狼が殴り飛ばしたイヴンダートが突っ込んだ店の陳列棚の補修がある。
それに、イヴンダートの死体が転がりっぱなしだ。
ランダーの情報網は広いから、今頃回収・補修に動いているだろうが、当事者の報告があるに越したことはない。
だから、とりあえず急ぐ。
「晩飯食った?」
「まだ」
「俺もまだ。一緒に食堂行くか」
「うん」
「あーでも、報告が先か。遅くなるかもな」
「うん」
「腹減ったー」
「うん」
一見狼は龍一に、適当に返事しているように思えるが、狼はいたって真面目に返事しているし、龍一もそれを理解している。
狼はこういう人間だ。
感情を表に出さない。
出し方など、とうに忘れてしまった。
「今日の晩飯何?」
「知らない」
「うおー、じゃあ楽しみだな。って、着いた」
気付いたら拠点の前に到着していた。龍一は足を止める。
あまりの速さに流れていた景色が静止し、夜空と木々を映し出す。
「さて、ボスに報告に行くか」
「うん」
2人は門をくぐり、拠点に足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!